長年エルムに出演した仲代圭吾。
美輪明宏、菅原洋一、グラシェラ・スサーナ、瀬間千恵同様、mss会館小劇場の時代からなので最古参。
言わずと知れた名優、仲代達矢の実弟。
兄の達矢が役者を目指し、弟の圭吾はオペラ歌手を目指す。
夢叶わずシャンソンの世界へ転身したことで日本支局長シャンソン界に大きな足跡を残すことに。
永六輔のように彼を高く評価する人も一部にはあったものの、音楽産業ビジネスの世界では必ずしも成功とは言い切れなかったかも。
「その歌声は、漁師が投網を投げるがごとく観客は知らず知らずのうちに引き寄せられていく。従って、1曲だけではその真価がわからない」
(永六輔談)
その光景を実体験したことがあります。
エルムのすぐ側にある「吹上ホール」で立食パーティーの仕事を一緒にした時のこと。
当時は、まだピアノ伴奏が”行代美都”でなかったので私が伴奏。
男性経営者ばかりの立食パーティーという事もあり、ステージを真剣に聴いている人は殆ど無し。
ステージの途中、お一人が卓上の花を一本抜いてステージにいる仲代へ手渡す・・・・・。
すると曲が進むにつれ幾人もの方が花を手渡し、ついには仲代圭吾の手の中でブーケのようになりました。
歌い終わって退席した彼は、エレベーターで上階の控室へ。
鳴りやまぬ拍手に、マネージャーが慌てて呼びに・・・・・。
そのあと、仲代夫妻と中山マネージャーと僕の四名で会食した時も彼はずっとその小さなブーケを手にしたまま。
「今日は、嬉しいステージができたなぁ。
明日までには、しおれちゃうだろうけどホテルの部屋に飾っておこう」
とても感動的なシーンに立ち会えた事は幸せです。