シャルル・アズナヴールに「日本で最高の訳詩家」と言って私を紹介したのはモーリス・ファノン。日本では「スカーフ」の作者として知られるが、フランスでは下の写真でわかる様に、ビッグスターの一人。後日、シャルルは、モーリスのことを「優しさそのものの歌い手」と評し、「ママKATO(私の母を“日本のシャンソンの母”と呼んだ)とモーリスが意気投合したのは当然。2人とも教員出身ゆえ、子どもたちの未来の為に、平和を願った」と言及。
シャルルの言うモーリスの優しさは、単に性格ではなく、文化の多様性を認める幅広い音楽観につながっていると確信した出来事を思い出す。
1990年、パリの「ル・コネッターブル」(モーリスのライブ・ハウス)と名古屋の「カフェ・コンセール・エルム」姉妹提携調印式の為来日した彼の伴奏をした時のこと。「さっき、シュウジがまちがえて弾いた時、僕の心は一瞬乱れた。けれど、その直後、二人が手をとりあって、今までにない感動的な歌が創られたんだ。何故だか解る?二人が同じ気持ちになれたことで、新しい作品を共同制作したことになるんだよ」と言ってハグ。今まで思ったこともない、音楽の真髄が、この心の中に刻まれた瞬間を今も思い出す。
シャルルもまた私にとって、優しさの塊のような友人であった。
2018年、最後の公演で、私にオリーヴ・オイル1ℓ缶(彼の自宅にあるオリーヴ畑で採れたもの)を手渡し、「あなたの健康の為に。オリーヴは平和のシンボル。ママKATOのように長生きして、平和希求活動をしてね」と語ってくれたことを、生涯忘れない。