タンゴの巨匠=アストル・ピアソラがカフェ・コンセール・エルム
の2階のmss小劇場へ来館した折のこと。
最も評価する歌手は?とたずねると
「シャルル・アズナヴール」と答えたのにはビックリ。
名のあるタンゴ歌手ではなく、シャルルの名前を聞くとは……!
「彼の歌は、レシタードだ」、そして「彼の歌と我々の音楽
(注:当時、異端視されていたアストルの前衛タンゴ)の共通点は、
「躍動するリズムと哀愁のメロディー、歌に込められた主張、とりわけ“愛”」
と語ってくれました。
今にして思えば、次々と色々な歌のスタイルを実験し、その中から
必要なものだけを残そうとしたシャルルと、クロス・オーバー・ミュージックの
先駆者でもあったアストルは、その音楽追及姿勢に於いて、
共通するものがあったと思われます。
ちなみに、アストル自身は、世界の音楽シーンに衝撃を与えた
ジェリー・マリガン(バリトンSax)との共演LPと「リベルタンゴ」の
LPには決して満足していないようでした。
「新しいスタイルの実験としての成功はしたかもしれないが、
作品としては駄作かな……」と言いつつ、
古典タンゴに立脚しながら、斬新なサウンドを構築したキンテートに
回帰する予感を与えました。
(何と言っても「アディオス・ノニーノ」が渾身の力を込めた名作)