「修滋のお母さんへのプレゼントとして、今朝書き上げたばかり」
との手紙を添えて、楽譜が送られて来ました。
差出人は、多くの世界的ヒット曲を持つR.ヴァンサン。五線紙の
裏にインクがにじむ正真正銘、手書きの楽譜に「加藤ハツさんへの
オマージュ」と表記のある、彼の最大のヒット曲「CHEZ LAURETTE」
を手にしたまま、涙が止まりませんでした。
私もあったことのない彼と、加藤ハツ館長は、もちろん面識が
ありません。それなのに……。
1982年、タンゴ・デ・ラ・エスペランサのアルゼンチン公演に際し
「スター・プレーヤーやバンド・リーダーより、無から有を創る人、
即ち作曲者であるお前への拍手が一番多いであろう」と予言した
マエストロがありました。確かにその通りでしたが、それ以上に
私の母への拍手が多かったのです。
G.スサーナが「素晴らしい作品を創造する加藤さんを産み育てた、
お母さんはもっと素晴らしいという拍手なのよ」と教えてくれたことは、
今も胸に刻まれています。
母・加藤ハツ館長への、これ以上のクリスマス・プレゼントは
ないという感激は生涯忘れられません。でも、誰よりも親を
大切にする考え方が、今の日本から失われつつあることへの
警鐘のような気がしてなりません。
『月刊なごや NO.388』より