今月号はフランス公演レポートのつもりでしたが、大成功した
コンサート以上に感動した出来事をお伝えしたいと思います。
アクセサリー作家、ジョン・シドニー・キャロンの店を訪ねて驚いたのは、
私の母の手紙が飾ってあったこと。内容ではなく、毛筆の美しさに魅せられたに
ちがいありません。
震災復興支援のため、母が90才で初録音したナレーションが入ったCDを
渡すと、ジョンは即CDプレイヤーにかけ、聴き終わるや否や、大声で泣き出しました。
側にいた店番の女性も泣いているのを見た私も感涙し、男2人が抱き合って嗚咽。
逢ったこともない私の母の死を悼み「こんな美しい文字を書く人は、
きっと心も美しいにちがいない」と言ってジョンは、母の手紙が入った額縁を優しく
撫でました。
コンサート・ゲストのシャルル・デュモン宅に招かれた時も同じくCDを渡すと、
すぐ聴いてくれて、まず奥様が涙を流し、続いてデュモンの目にも涙。
コンサート・フィナーレで彼の代表作「モン・デュー」(私の神様)を
日本人歌手16人と一緒に歌うことを約束してくれました。
「音楽は国境と言葉のちがいを超えて、人の心を結ぶもの」という
加藤ハツ館長の信念が異国の地で実証されたことは、何よりの供養です。
『月刊なごや NO.387』より