日本演劇界の名脇役の一人、故・内田朝雄さんは、
1993年の「松本幸枝ドラマティック・シャンソン・リサイタル」に際し、
「シャルロットのクリスマス」を歌う(と言っても、全くメロディー歌唱せず
15分間セリフを言い続けるシャンソン)為の演技指導をして下さった方。
リサイタルのアンコール曲「愛の為に死す」(フランス語歌唱)を
ビデオでご覧になった印象は「何語か分からんが、伝わるものがある。
指導者がいいに違いない」というもの。
自己流のフランス語なので、発音に関しては問題があっても
「伝わるものがある」という評価は嬉しい。
彼女のこの時の歌に関して、指導者はジャクリーヌ・ダノと言うべきか、
指導者はないというべきか…。
アズナヴールとは全く違ったアプローチで、
ジャクリーヌが歌った「愛の為に死す」は絶品で、
当時シャンソンに取り組んで間もない松本幸枝さんが、
それをコピーして歌うことができたことには驚きに値する。
特に母音を消した歌唱法は、今でこそ幾人もの日本人歌手が採り入れているが、
20年前には、ほんの数人しかしていなかった技法。
ちなみに、翌年、このビデオを観たエルヴェ・セラン
(ジャクリーヌ・ダノやリシャール・ガリアノのピアノ伴奏をしている
フランス最高のジャズ・ピアニスト)
が内田朝雄さんと全く同じことを言ったのにはビックリ。
「音を消して聴いても伝わるものがある」…!
言うならばガラス越しに表情だけで会話をするのと同じということ。
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内田朝雄さんからの賛辞
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