我が蔵書の中に発見した大岩祥浩氏の力作「アルゼンチン・タンゴ/アーティストとそのレコード」は全528ページ、収録アーティストは204名、その他名前のみ書かれて人が111名、計315名と言うもの。
著者は私もお目にかかった方で確か「お茶舗」の方。即ち評論家ではない。
残念ながら日本シャンソン界には専門家の肩書はあっても、大岩氏にかなう様な方は存在しない。
タイトル通り「レコード」に焦点をあて(←と言う事はLPは恐らく500枚はお持ちかと思われる)、更に来日公演はほとんど聴いておられるに違いない。
”タンゴのバイブル”と言っても良いようなこの書物の中から、幾人かについて記述したい。
あくまでもマエストロと歌手中心に書かれており、多くの「作詞・作曲者」等に触れられていないのは少し残念に思う。
【アルベルト・アロンソ】
「シスピエラ~」の歌詞を書いたウルグアイのモンテビデオ出身者。
何故かタンゴの本場はアルゼンチンにあらずと主張する人がいるのは周知の事。
【エドゥアルド・アローラス】
ブエノス出身で「バンドネオンの虎」と言われ「デレーチョ・ビエホ」の作者として知られるが32才で逝去。
【エルネスト・バッファ】
1932年ブエノスに生まれたバンドネオン奏者。
【アメリータ・バルタール】
1906年ブエノス出身の歌手。言わずと知れたアストル・ピアソラの元妻。彼女の末期のしわがれ声は聴いた事がある。全盛期にはオペリータ「ブエノスアイレスのマリア」「ロコのバラード」「チキリン・デ・バチン」等、オラシオ・フェノールとアストル・ピアソラ作品が大ヒットした。
【ホセ・バッソ】
ブエノスアイレスに生まれ、カルロス・ガルシアと共に来日している。
【オズバルト・ベリンジェリ】
ブエノスアイレス生まれのピアニスト。
【ロドルフォ・ビアジ】
ブエノスアイレス生まれ。「ラ・プニャラーダ」を新感覚でアレンジした。
【ミアル・カロ】
ブエノスアイレス生まれ。「インディフェレンシア」が有名。
【ファン・カンバレリ】
ブエノスアイレス生まれで「バンドネオンの魔術師」の異名を持つ。
【ファン・ダリエンソ】
ブエノスアイレス生まれのマエストロ。ダンサンブルなリズムで一世を風靡した。
【カルロス・ディ・サルリ】1903年生まれのピアニスト。個人的に私の一番好きな奏者。
【フェルナン・ディオス・フィリベルト】ブエノスの下町ラ・ボカに生まれる。「ケハス・デ・バンドネオン」の作者。
【カルロス・ガルシア】
1914年ブエノスアイレス生まれ。私達のアルゼンチン公演で大変お世話になった人。
大ヒット曲は数限りなく「ミ・ノーチェトリステ」、映画に使われた「エル・ディア・ケ・メ・キエラス」、更に「マノ・ア・マノ」「トモ・イ・オブリーゴ」「シレンシオ」「ミ・ブエノスアイレス・ケリード」・・・。こんな大作曲家が私達「エスペランサ・オーチョ」に”タンゴ友好証”を与えて下さった事は感謝、そして何たる光栄!
【マリアノ・モーレス】
「アディオス・パンパミア」「ウノ」「タキート・ミリタール」の作者。ピアソラと比較される事も有。ブエノスのサン・テルモ出身。エピソードとして古賀政男の友人であり、藤原義江の伴奏をしたとか・・・。
【ロベルト・パンセーラ】
「オクテート・ブエノスアイレス」のメンバーとしても知られる。我々「エスペランサ」の演奏を賞讃。
【エンリケ・カディカモ】
「ノスタルヒアス」「エル・ジョロン」のヒット曲有。
【アルフレド・レ・ベラ】
ガルデルと共作で名曲を残した。「シレンシオ」「ミ・ブエノスアイレス・ケ・リーダ」「ボルベール」等。
【オメロ・マンシ】
「スール」「マレーナ」で知られる。
【ホセ・ルイス・パドゥラ】
「ヌエベ・デ・フリオ」の作者として知られる。
【エドムンド・リベーロ】
私達が出演した「エル・ビエホ・アルマセン」のオーナー。その意味で大恩人。