どこの国でも歌手はドレス等ファッションには気を遣いますが、
フランスでは常に同じデザイナーにこだわる人も、
デザイナーを次々と変える人とが共存しています。
ジャン・ポール・ゴルチェがドレスを担当した
シルヴィー・バルタンのオランピア劇場のコンサートでは
ルックスが良く身長の高い(要するにモデル)男女が押しかけていて、客席の様相が全く違いました。
ジャクリーヌ・ダノは
クリスチャン・ディオールの黒一色のドレス(とても高価と分かる)にこだわりましたが、日本人には不評で残念に思いました。
ジャクリーヌ・ボワイエはデザイナーと言うより「青の貴婦人」と呼ばれた母であるリュシエンヌ・ボワイエにちなんだ青色のドレスにこだわりました。
白にこだわるコラ・ヴォケールは、時として他の色を選ぶこともありましたが・・・。
ドレスにこだわるだけあって、
そのドレスを生かすパフォーマンスの見事な歌手もいます。
その好例はリバーシブルのスーツを踊りながら裏返すミレーヌ・ファルメール。
VTRを見る度にワクワクさせられます。
彼女は、共同制作者と言うローラン・ブトナの描くPVの世界をステージ上で具現化するのです。1作ごとにテーマが変わり、少年風だったり時にヌードまで出てくる過激なものも。
それ以上にショッキングなのが「ヴァンパイヤ・リズム」要するに吸血鬼。
簡単に言えば、役者としてのアプローチ。
キリスト教へのレジスタンスも垣間見られる。ロシア風の「トリスターナ」や中国風の大規模な(おそらく1,000人に及ぶ)騎馬戦。
性同一性をテーマにした「告白」は、私の未承認訳詞で幾人かが歌っている。
彼女はオリジナル曲しか歌わないのにある時突然、
グレコの曲「裸にさせて」を歌って新鮮に思った記憶がある。
1991年の「二重人格」は大ヒットし、「ヌーベル・シャンソンの女王」の位置は不動のものとなった。
パトリシア・カースもデビュー当時のへそ出しルックから、キュートな魅力のキャミソール・ドレス、そして大人の魅力のニット・ドレスを経てジーンズ・ドレスへと目まぐるしく変化させている。
こうして、パトリシア・カースやミレーヌ・ファルメールのようにファッションをステージ・パフォーマンスとして定着させる歌手が多数いることもフランスの音楽文化の奥深さに違いないと思います。