昨年10月1日、天に召されたシャルル・アズナヴールは、
晩年の20年間、日本のシャンソン歌手たちに、
革命的な歌唱法を伝授しました。
「彼の歌は、レシタードだ」と評した、タンゴの巨匠=アストル・ピアソラ。
「眼差しだけで人生を語る」という賞讃の表現でオマージュを作詞・作曲した
ミッシェル・ジュールダンの言葉を待つまでもなく、
口を動かすだけで声を発しない、俗称「内緒話唱法」、
観客の感情を引き出す為の「アインザッツ唱法」をはじめ、
工夫に工夫を重ねた独特の歌唱法は、
シャルル・アズナヴールを日本に紹介した功労者の一人でもある永田文夫氏によって
「永田文夫シャンソン研究所」の歌手たちに直接指導され、
更に、カフェ・ド・ラ・ダンス創立者=カトリーヌ・アトラニが創設した「フランス・シャンソン芸術協会」
発行の「シャンソン・ディプロム」(シャンソン免許状)最高位保持者でもある瀬間千恵、菅原洋一、
堀内環、指導者証取得者の岡山加代子、青山桂子等を通じても、広められて来ました。
歌い方については、実際のレッスンや講座の中でしか伝えづらいのですが、
一番わかりやすいのは、視覚でわかる<マイクの持ち方=角度と距離>です。
シュアーSM 57の時代(1970年代)、彼はマイクを直角に立てて歌唱。
SM 58が一般的になってからは、若干斜め(と言っても45度以内)にして、
耳障りの良くないポップ・ノイズ、リップ・ノイズを避け、
更に、客席に聴覚障害者がいても発語がわかるように配慮。
それ以上に、世界中でメッセージを伝える為に、
パントマイム手法も採り入れ、眼と口の表情を重視しました。
アズナヴールが教えてくれた多くのことをまだまだ歌手たちに、
受け継がねばならないと思っています。