「銀巴里」閉店後、その精神を受け継ごうという動きは、あちこちで活発に見られる。
過去の追憶でなく、次の世代に向けて発信をしようとする日仏シャンソン協会の
モデル・ライブ・ハウス「カフェ・コンセール・エルム」が力及ばずの展開しか出来ていない所を、
よりハイ・グレードなラインナップで連日奮闘している「蛙たち」で、懐かしい出演者と観客に逢えた。
エルムに出演歴のあるピアノの砂原嘉博は、
サウンドのバラエティもさることながら、曲によってノンペダルで弾く数少ない人。
「夜のメロディー」「クァンド・クァンド・クァンド」「オー・シャンゼリゼ」は
全く ノンペダルで右足は常に床の上(ペダルには全く触れない)
それゆえ、音が濁らず、キレが良い。
ヴェルムーランも全く ノンペダルだが、日本人には余り見かけない。
以前、岡山加代子と倉敷で共演して以来、久しぶりのあみ(ami)。
以前と比べてグレード・アップの大きさにビックリ。
無駄のない立ち姿で、左手はまっすぐ下へのばしたまま。
しかも、指先まで客の視線を意識したポーズ。
一方、曲によって動きも考えた上でのステージング。
まばたきの少なさも、歌い終えた後の口元の動きも、
以前とは格段の進化。
エルムにも時々出演する劉玉瑛は、今人気急上昇中のシャントゥーズ。
と言っても狭いシャンソン観にとらわれた歌い方でなく、
それゆえ、シャンソン・ファン以外にもファンを広げている様子。
コットン・クラブでのライブが既に満席というのもうなづける。
歌唱法も変化=進化しているが、あみと違って、恐らく本人は気付いていないのでは?
MCの時のマイクの立て方と、歌の時の斜め具合は恐らく無意識で、
それゆえ耳の良さを感じる(MCの時のポップ・ノイズが殆ど減少)
何よりフレーズに終わりで①口を閉じる②笑顔になる③口をあけてから息を送る
という細かい芸を1~2秒でしているのは、どこで習得したのだろうか?と
不思議。
特に、「あ」のような母音が一拍目となるフレーズのアタックが効果的で
メリハリのきいた歌い方となって来た。
客席で談笑する時の笑い声の低さは瀬間千恵と同じなので、
低域と高域の使い方がより巧みになれば、更なる進化が期待できる。
グランヴデットの花木さち子は、ますます自分の長所をよくわかって、
それを生かした歌唱法で客席を魅了。
何より、客の合いの手でMCが長びきそうな時、すかさず
「その話の続きはステージの後で」と切り返したのは、見事な進行。
こうした3人をブッキングしたり、カンツォーネ・コンクール受賞者を3人揃えて
(何と、我等の古い音楽仲間・柴田容子も出演)のライブを意欲的に続ける
「蛙たち」は、声量で客席を圧倒しつつ、気のきいたトークで客席を和ませる
ピエールはじめ、幾人ものホーム・シンガーを擁し、これからのシャンソニエ
(日本では、シャンソン・ライブをこう呼ぶ)のひとつのお手本として期待大!