一審査員としての個人的な印象を言えば、
私自身、他の4つのコンクール(すべてシャンソン・コンクール)の審査の時より
「歌は響きの芸術」という観点が、「歌は祈り・願い・叫び」(シャンソンの三大要素)という観点より
若干、比重が大きくなった気がしています。(言わば訳詩家協会の理事としての立場と
日仏シャンソン協会日本支局長としての立場のちがい)
そして、以前、石井好子さんが神戸の「日本アマチュア・シャンソン・コンクール」の講評で述べた
「歌のコンクールで飛んだり跳ねたりは……?」
につながる考え方の審査員もあったのかも知れません。
そんな中で、審査員や会場だけでなく応募者の中でも評価の高かった林夏子さん
(受賞とはなりませんでしたが「ブラボー!ムッシュ・ル・モンド」を歌唱)の健闘が光っていました。
何より、プログラムの訳詞者欄にある私の名前を見つけ、「この曲をぜひ歌いたい!」
と言われた方が2人いらしたことが、彼女の歌唱のすばらしさを物語っています。
(作品の良さを伝えられる歌い手が最高の歌手、と言えます)
単純に得点順に並べ、賞が決まるコンクールもあれば、
上位の人の中で各審査員が意見を出し合って賞が決まるコンクールもあります。
ピアノ弾き語りで出場した人は、そのピアノ演奏があまりに素晴らしすぎて(=目立ちすぎて)、
「歌唱」というコンクールの観点からグランプリではなく別の賞ということになった気がします。