シャンソンの作詞家として、
異才を放ったフランク・トマが亡くなって、まだ心にぽっかりと穴が空いています。
ジャクリーヌ・ダノが紹介してくれたフランク・トマに「シャンソンの妖精」のCDを贈ったのは、
25年も前のこと。その中に、青山桂子さんの歌声で彼とジェラール・ベルリネールの「ルイーズ」が収録
されていました。それをとても気に入ったフランクから、熱烈なお手紙が来て以来、永いおつきあいと
なりました。
日本では「サヨナラ」の作者として知られる彼のマンションは、チュイルリー公園の前。
とても高級な場所で、黄金にデコレーションされた中央階段は、まるで映画のセット!
何度目かの訪問時、扉の音がしたら
「ボクの可愛い子猫ちゃんが、散歩から帰って来たのかな?」と言うので、猫好きの私が喜んでいたら、
きれいな奥さまが顔を出されたのでビックリ!
奥さまは元マヌカン( mannequin : モデル )で、「猫より美人」とノロケる彼。
ドン小西さんのような雰囲気のフランクですが冗談もけっこうよく言う人でした。
私との二人三脚の仕事は、フランス映画「幸せはシャンソニア劇場から」の日本上映を成功させるためのプロジェクト。
配給の日活へフィルムが渡る一年前から主題歌を含め、劇中歌を日本語で歌って広め(楽譜の無料配布もしました)、フランス映画としては久しぶりのヒットとなったと、日活からお礼の言葉もありました。
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」でマリオン・コティヤールは実際には歌わず、
ジル・エグロ(エルムで飛び入り歌唱しました)が歌唱していましたが、ノラ・アルネゼデールは2年間の
特訓で実際に歌っています。
巷で言われているのとはちがい、フランク・トマが書いたシャンソンが先にあり、
それをクリストフ・バラティエが気に入って脚本を書いたもの。
後に、
ジェラール・ベルリネールの追悼CDを青山桂子さんが出され、
フランクとの作品「ルイーズ」を収録したことに、とても感謝してくれたことを思い出します。
今、目の前には、フランク・トマから送られて来た膨大な量の楽譜があります。
私の病気の回復次第ですが、生あるうちに日本語訳をつけフランクの友情に応えたいと思っています。