先月、久しぶりに演奏した日本橋三越劇場は、由緒正しい歴史のある重厚な劇場で、
その直前「三田佳子がジェームズ三木脚本で三越劇場出演」という
(三づくし)キャッチ・コピーと共に
「客席を近くに感じられる劇場」とのコメント有。
反対に、岡山加代子さんは
「天井が低く、2階席も眼前なので“コンドルは飛んで行く”を歌っても低空飛行だった」
とのコメント。
確かに舞台上で創造したものを客席へ届ける
(その伝統に寺山修司やテント芝居は反旗をひるがえしましたが)演劇と、
歌手と聴衆が音を通じてイメージを共有する歌の違いがあります。
そう言えば、フランス・シャンソン芸術協会のカトリーヌ・アトラニ女史が
「狭い空間で毎日歌っている歌手
(彼女は、モンマルトルのラパン・アジルを指して言った様子)は、
歌の創り方が狭くなり、大劇場でロングランをするようになると
(E.ピアフを指している?)繊細な表現をしなくなる」
と言ったことを想起させられました。
それにしても、三越劇場の客席二重扉に「のぞき窓」があって
開演中の様子を外から確認して入場できるシステムは、
パリの古い劇場(レオ・フェレが愛したリパブリックのデシャゼ劇場のように)
と同じで、そのレトロ感が人間味を感じさせて落ち着きます。