数多くの素晴らしい歌手が誕生した日本のシャンソン界にあって、
この人がなければ、どうなっていただろう?と思える歌手が幾人か挙げられます。
その中で、故人を別にすれば、真っ先に瀬間千恵さんを挙げるべきだと思ってきました。
その思いは、この1~2年ますます募っています。
名古屋まで年5回のレギュラー出演を33年間も続けて下さる中で、
年を重ね、声のコントロールは勿論、体調の維持にも苦労しつつ、
その歌声が一層ストレートに心の奥に届くようになっているのは何故?
12月21日のエルム・ライブでも、
ご本人は「若い人たちが素晴らしく育っていらっしゃったから、もう私などは…」と、
ご自分の歌にはどうしても自分で納得いかない様子。
(これでいいと思ったら、歌手はおしまいと言うのが当然かもしれませんが…)
瀬間さんが歌う、日本の歌(時には演歌も)は、
そのオリジナル歌唱者(ビッグ・スターたち)より、
あきらかに桁違いに感動的です。
目を瞑って聴いていると、「歌は響きの芸術」という定義そのものだと分かります。
歌の持つ本当の素晴らしさが分かる歌唱と言うのは、
最高の表現者にしかできないもの。
「素晴らしい演技」と分かる演技はダメ…とは故内田朝雄さんの言葉。
日本シャンソン界に、この人がなければ…と思うのは、
瀬間さんの歌に影響されたエルムの歌手たちが、
フランスで高い評価を得ている事実があるからです。
ジャクリーヌ・ダノが賞讃した日本人歌手が美輪明宏と瀬間千恵の二人であることと、
その二人に育てられたのがエルムの歌手たちであることを考えた時、
彼女たちはなんて幸せなのだろうと思います。