「銀巴里の女王」と呼ぶ人もいる瀬間千恵さんは、私たちにとっても特別な存在です。
銀巴里へ通っていた学生時代(夜行列車が交通手段)瀬間さんのステージは、毎回聴きに行きました。
クルトヴァイル作品を歌われる瀬間さんを下手側の真横から聴かせていただきました。
そこはピアニストの指先の見える位置で作本社長から特別な計らいの指定席扱い。
一般的な歌手と違い、評論家などの玄人受けする歌手。
とてもアカデミックな歌声です。
初期のエルムでは、そんな瀬間さんの伴奏を私がさせていただきました。
曲のテンポや色々な指示は一切なく、歌われるその歌は(視覚的に表現すれば)
神々しく輝いていました。
ある時、「加藤さんの所でのビデオ・スタッフをお借りできないかしら?」とのご依頼。
東京の一流スタッフに囲まれてステージをなさっているのに「何故?」と思いましたが、
すぐにその理由が分かりました。
私たちのコンサートは、リハーサルでもVTRを回し、スイッチャーでの一発撮りでなく後で本番の映像とミックス編集をしているのです。
その為には、歌手だけでなくバンドもスーツを着て、
カメラはステージ上を自由に動き回れるように
30ページ近くに及ぶ台本を本番前に読み込んだ上で録画すると言う事をする必要があるのです。
通常のコンサートではバンドはジーパンにスニーカー姿という事が多いので、
こうした協力を頼みづらいのです。
瀬間さんのステージは、おそらく瀬間さん自身の頭の中に
台本作家や演出家的な要素がおありになって
自己完結していらっしゃるように思いました。
瀬間さんのステージで、一番忘れられなかったのは
ボルゾイの愛犬をラストシーンで連れて出て来られた事です。
独創的な発想に驚きました。
エルムに瀬間さんがご出演下さることは、私たちにとってのステイタスです。
ご出演を続けて下さる事が私たちの最高の栄誉です。