名古屋の吹上に「カフェ・コンセール・エルム」が誕生したのは、1988年7月3日。
オープニングを飾って下さったのは、菅原洋一さん。
その後、美輪明宏、瀬間千恵、堀内環、花田和子、しますえよしお、古賀力、
村上勉、嵯峨美子、宇野ゆう子、渡辺歌子…
まるで銀巴里の引っ越し公演の様な豪華出演者に加えて、
グラシェラ・スサーナ、ロス・インディオス・タクナウ、トリオ・ロス・ペペス、
マリキータ&ジロー、前田はるみ、坂本スミ子、奥則夫…
ラテン・タンゴ・カンツォーネのスター歌手も…。
エルムの独特のシステムであった「エルム・シスターズ」第一号となった
野原百合子さんが今年亡くなって、
私の青春時代(と言うには少々遅かったのですが)に、
彼女の店でピアノ弾き語りをしていた頃を思い出しました。
八事のビル2Fにあった小さなお店なのに、グランド・ピアノが入れてあって、
彼女が好きだった奥則夫さんのLPがいつもかかっていました。
ご自身も歌いたくなって、私の所にレッスンに通われ、
瞬く間にファンのお客さまも増えレギュラー歌手になれるという直前に、
別のライブ・ハウス出演の話があり、エルムを辞められました。
その後もお客様として度々エルムにはご来店されましたし、
ご自宅にもよく伺って貴重なテープやLPを一緒に聴いたりしたことも懐かしい思い出です。
美術を教えていらっしゃるご主人もとても優しい方で、
彼女の音楽活動を支えられ理想的なご夫妻でした。
今日、偶然彼女の1994年の初リサイタルのVTRが出てきて、
その頃を思い出しつつ見入っていました。
当時まだ多くの人が歌っていなかったパトリシア・カースの歌を多く採り上げ、
2部ではピアノ弾き語り(日本でもピアノ弾き語りのシャントゥーズは珍しい時代)も披露。
照明がセンター・ピンの達人と言われた御原祥子さんで、
幻想的な雰囲気を創って下さって、とてもおしゃれで大人っぽいリサイタルVTR。
「赤いポスター」の様なシャンソン・アンガージュにも挑戦しましたが、
一番思い出深いのは「懐かしき恋人の歌」。
野原百合子さんの希望で私が日本語詞を作ったもので、
歌い始めの「それはもちろん」という部分を気に入ってくれて、
「どうしてもリサイタルで歌いたい」と言ったのに、
歌詞を間違えたことをとても悔やんで
「何年か後に、もう一度リサイタルをしてリベンジしたい」
と言っていましたが、叶わぬままに帰らぬ人となりました。
伴奏者に気持ちを伝えることの得意な人だったことを思い出しています。
合掌。
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「懐かしき恋人の歌」の想い出
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