今から25年ほど前の事。
訪仏時の単宿「グラン・ホテル・フランセーズ」から、さほど遠くないオートクチュール店でアコーディオンの音色に誘われて入店。
そうなのです。映画のシーンにふさわしい出来事。
異国の青年(当時の私の事!)が吸い寄せられるように扉の中へ・・・。
古ぼけたレンガ作りの壁。2人きりのモデル、畳10枚程の狭い空間にすしづめの観客、照明は裸電球なのでランウェイを移動する服はかすかに材質がわかる程度。
壁際に立ったまま見ていた私に店主が声をかけて職業を尋ねて来た。
「キャバレーを経営するピアニスト」と答えた時のその人の嬉しそうな顔が眼に浮かぶ。
彼は、「フランス人と日本人の感性は類似している」と言った。
誇り高きプライドに裏打ちされたその言葉は私の心を捉えた。
懐かしい思い出・・・。