「エルム」の長い歴史を振り返ると”事件”(少々大袈裟かも)と言えるような事が幾つもありました。
美輪明宏さんがエルムに出演され、1ステージ目が終わった際に「加藤さん、あのお客様達には帰っていただいて。お代は私がお支払いします」と。
ご常連客がクラブのママさん5人を引き連れて来て下さったもので、明らかに場違いな雰囲気。
ご本人も雰囲気を感じて、すぐにお帰りになられました。後日「やっぱりエルムは歌を真剣に聴く人しか誘っちゃいけないよネ」と。
ある時、ゲスト歌手が数人のお客様をお連れ下さいました。
お酒を飲みに来られた様子で、音楽を静かに聞く感じではありませんでした。
雰囲気を壊す事に腹を据えかねた私が客席に向かって
「このお客様にはお帰りいただこうと思いますが、いかがでしょうか?」とお尋ねすると全員が「そうだ」とばかりに拍手。
するとその方は「何を生意気な」と私に殴りかかられ、
私のすぐ近くに居たお客様が「危ない」とその方を突き飛ばし、ボトル棚でしたたかに腰を打ち付け、帰り際に「明日の新聞を見てろ!」とひと声。
後で聞くと某新聞社の広告局長らしい。
もち論、何も書かれませんでした。
とある著名歌手がご来店下さった折、「加藤さん、あんなレベルの前歌だったらこの店の恥です」とのお言葉。
でも加藤ハツ館長は「誰でも最初は初心者ですから」と取り合いませんでした。
一番嬉しかったのは、中日劇場で1ヶ月位猿之助公演があるとしばしば来店下さった内田朝雄さんが前歌のシスターズ達を呼び集め、アレコレとアドバイスして下さった事。
他のシャンソン・ライブと違う雰囲気は、こう言う方々のお力によるものだと思います。
唯一、悲しい記憶は当時NHK名古屋の局長(エルムのフランス公演を、初の衛星中継でON AIRしてくれた方)が東京へ戻られてから当時「海老ジョンイル」一派との闘争の末、自殺されたショッキングな事件。
ほとんどの週刊誌が報じました。
エルム史上に残る大事件。
優しく親切だったそのお人柄を思い出しつつ合掌。