ジャクリーヌ・ダノは、
かつて「カフェ・コンセール・エルム」で「行かないで」を歌った時、自分が飲んだ赤ワイン入りのグラスを手に持って出て来て歌いました。
500名の劇場では、客席扉から。1000名の劇場では普通に上手ソデから出てきました。
ナイトクラブ「青児」で「いつもの二人」を歌った時には、客席の空グラスとナプキンを取って、そのグラスを拭きつつというパフォーマンスで行いました。
ピアフのこの歌にはピッタリのシチュエーション。
パリの「キャバレー・ドン・カミロ」では、男性客の膝に座って歌ったりと・・・。
単なる思いつきと言うか、瞬間のヒラメキと言うか・・・とにかく、歌は瞬間芸術であることをわからせてくれます。
逆に、イヴ・モンタンもシャルル・アズナヴールも計算し尽くされた演出(歩幅までも)でアズナヴールの「Je t’aime」では、マイクを右手に持つ箇所と左手に持ちかえる箇所が精密機械のよう・・・。(彼は、この曲以外は原則右手に持ちます)
ジャクリーヌ・ダノは時として高音が出なかったりしますが、その時もその後の表情動作でフォロー。
劇座との合同公演で「冷たい美男子」を上演した時、ベッドに投げた椅子が目に当たった時も、いかにも泣いているようにして、小物の水差しの水で眼の打撲を冷やして最後まで観客に気づかれずに上演しました。
直後、病院へ行き眼球から外れた打撲と判明、ホッとしたことを覚えています。